おはようからおやすみまで

足の臭さには少々自信がございます。

クエになった日

 

 

車のラジオなんかではハロウィン終わった尻から早速クリスマスソングとか流れ始めちゃってる。

 

とはいえ、12月って明日からじゃん?

 

ハロウィン終わった段階でクリスマスまで55日あるじゃん。

単純計算で二十日大根が3回目の収穫迎える手前くらいありますよね?

 

怒涛にイベントごとが押し寄せてくるとね、いくら私が我の強い根暗インドア野郎だとしてもちょっと精神磨耗しちゃうのよ。

 

直近の連休だって手術受けてたし。

 

手術って聞こえは大げさだけど手術にもピンからキリまである。

 

右頬にできた粉瘤とかいう99%良性の腫瘍の摘出をしてきたけど

規模の小さい手術なので余裕の日帰り。

麻酔も部分的なもの。

 

しかし、とっても健康に生きてきたため

メディカルなことに対する恐怖心が凄まじい。

 

歯を削る、何でもかんでも血液を抜いて調べようとしてくる、というような痛いことのイメージでいっぱい。

 

手術が近づくたびに増す恐怖。

 

意識あるまま顔を切られるとか正気の沙汰ですか?これが人間のすることですか?

 

不安から医者という職業に就く方の人間性を疑いだす始末。

 

だが、よく思い返せば顔を切るのは先生の仕事以外のなんでもないし、

1ヶ月前に「オッケー!摘出で!」って気前よく答えてたのも私だった。

 

 

心はかなり乱れている。

とはいえね、私もいい大人なわけ。

今年で干支も2週した。

おまけにその日はすっぴん、声はいつも通り酒灼け風味。

 

こわ〜〜〜い><

なんて言おうもんならむしろこっちが怖がられる。

遅れてやってきたハロウィンですか?

ノンノンノン。

こちら、仮装どころかありのままです。

 

以上の理由から間違っても怖気付く訳にはいかないのである。

 

そんなこんなであれよあれよという間に手術が始まり

恐れていた麻酔も効いてきて、切りますという宣言がなされた。

 

痛さこそないものの顔が切られていると思うとやっぱり怖かった。手汗が尋常じゃなかった。

 

ついでに脇汗も凄かった。

 

そんで先生めっちゃ話しかけてくる。

 

でもね。ちょっと待って欲しい。

私、今、まさに、ほっぺたを切られてる。

少し喋るだけでほっぺたなんか動きまくる。

母音が「い」の音を発そうもんならもう終わり。

手術前にくしゃみや咳が出そうになったら教えろって、大惨事になるって説明してましたよねさっき。なのにどうして疑問系の会話をするの?この状態で答えられると思った?

緊張をほぐそうというお気遣いでしょうが、普通に結構スリル感じてる。

 

聞こえてないふりに徹することも考えたが

無視されたとヘソを曲げて顔をめちゃくちゃにされては困るため、なるべくほっぺたを動かさないように話した。

 

先生は次々といろんな話をする。

その度に私はひょっとこのような顔で返事をした。

20代の女性が人前でするような顔では必ず無い。(シート被ってるから見えてない)

 

人って頬を動かさないように話すと

過度にしゃくれた人のような口ぶりになるんだなと思った。

 

 

映画の話題が終わった辺りで先生が言った。

 

「冷静だね。よくクールだって言われない?」

 

 

 

 

 

当たり前だろが。顔動かせねえのに喜怒哀楽出せるかよ。

 

すぐそこまで出掛かってたけど言えるわけもなく出せない喜怒哀楽の代わりにクエのように顎を突き出してまた「ソデモナイデスヨ」と一言答えた。